はじめてプライベートでセックスをしてから1ヶ月くらい経った頃には、エミを彼女にしたいと思うようになっていた。特に彼女の夢である東南アジアへの1ヶ月あまりの旅行に一緒に行きたいということを話すようになっていた。ただ、優柔不断で八方美人の性格のため、僕にかなりなついていたものの、今彼の存在が強いらしく決め手に困っていたようだった。

そこで、江ノ島デートとそこで彼女の好きなラベンダーを用意して、別に彼と別れなくていいから「東南アジア旅行に一緒に行こう」とはっきりとオファーした。デートとプレゼントにとても満足し、東南アジア行きをはっきりと決め、当時僕が住んでいた広尾で1週間くらい同棲をした。しかし、アパートに戻った彼女から「やっぱり彼を捨てられない。でもヒロさんのことも好き。どうすればいいかわからない」という悪魔のような女らしいラインがきた。

そして、ついにあの記憶から忘れられない、ドラマのような展開に。新宿から2-30分離れた大学の近くのアパートに2人は同棲していた。僕はそのラインを受けたすぐ後に住んでいた広尾からその家まで向かった。強制的に彼女を連れていくことにしたのだ。

アパートのチャイムを鳴らすと彼女が出た。六畳一間の狭いアパートの奥に彼がすわっている。彼は「エミ、君の好きなようにしていいけど、本当にそれでいいの?僕は悲しいよ」となかなかいい引き止め方をしている。しかし彼女は「もう遅いよ。ヒロさんがここまで来ちゃったらもう止められないよ」と荷造りをしている。

僕も、手を引っ張るようなことはしないことを決めていた。彼女の決断の引き金になればいいと思っての行動だった。最終的にエミは泣きながら、彼と住んでいたアパートから出ることを選び、僕と同棲を始め、さらに彼を故郷に帰し、その2週間後くらいから東南アジア旅行に出かけることになった。

あの時の彼の表情は忘れられない。もし、僕が彼だったらどんなに深く傷ついただろう。最愛の彼女をデリヘル店長に取られる悲しさ。男としての威厳はズタズタだ。しかも目の前で別の男を選び去っていく。

倫理的に考えれば、好き同士の恋人の仲を引き裂き、自分のものにする構図なので、これに嫌悪感を抱く人も多くいるだろう。特に恋愛市場における負け組意識の人たちや草食と呼ばれる人は。しかし、僕にとっては当たり前のことだった。そのために戦って来たとも言える。

より強い男になりたかった。すぐれた容姿の女性を惚れさせる強い男に。こんなにもはっきりと鮮やかに勝ちと負けが浮き彫りになったシーンは僕の恋愛史上でも最初で最後だった。はっきりと意識した、もう僕は負けサイドにはならない人間なんだ。

シンガポールからタイを経由してラオス、ベトナム、カンボジアと遺跡や村を訪ねる素晴らしい旅行にセックス好きのアメリカ人ハーフ大学生モデルと1ヶ月半ほぼ毎日セックスし、時には遺跡で我慢しきれずに、寝台列車で息を潜めて、ドミトリータイプの宿やバスの中で、クラブで意識なくなるまで酒を飲んでタクシーの中とシャワールームとベッドで3回、、一生分の精子を使い切るんじゃないかという勢いで旅をしながらセックスをしまくった。

しかも彼女は携帯でビデオを撮られることに快感を感じるらしく自ら頼まれてたくさんビデオも撮った。最終的には変態すぎてついていけなかったのと、別のより魅力的な女性と出会えたので旅行後に別れた。その後連絡を取っていないがどこかのタイミングでまたお店に戻ってくるんじゃないかと予想している。