「仕事お疲れ様。」
「はい、いくらバックすればいいんでしたっけ?」

外はかなり蒸し暑い夏の夕方、僕たちは涼しくテーブルの間隔の広いファミレスにいた。彼女は清々しい色のワンピースで連続で2人の相手をした後だった。僕はその時既に、彼女と「やろう」と思っていた。

プレイの話も早々にイエスを引き出してから

「寿司は好き? 」
「? はい、好きですよ。」

直接オファー。

「近くにいいとこがあるんだけど行かない?」
「はい、行きたいです」

迷わずにイエスだった。初めての出勤だし、僕は店長なので、上司と部下の関係。パワーハラスメントというか、普通の男女の関係より断りづらいということもあるが、彼女の場合はその性格がその後の全てを決定したと言ってもいいだろう。

見晴らしのいい寿司屋で食事を終えたあと、どこに行くかも言わずに外へ出た。彼女の手を繋ぎ行き先を告げず歩き出す。お店で会話していた大学で学んでいるという環境についての質問をして、会話を続ける。歩いて1分もしないうちにはじめて講習をしたホテルの前に。女性にグダがある場合は会話を続けたり、二択の質問したりでホテルへの入館を紛らわすが、今回はそれさえ必要なかった。ホテルに入る前、ふと僕がエミの目を見ると、エミは小さくうなづいた。彼女も望んでいたのだ。

2人のお客様の相手をしたあとなのに、その性欲は衰えることを知らず、楽しく激しいセックスをした。彼とセックスができなくなった話もこのとき打ち明けてくれた。駅までエミを送って別れるときに

「私がヒロさんを好きになったちゃったらこのお仕事できなくなったちゃうかも」
「それは君の自由だよ。でも海外旅行のために50万円まで稼ぎたいんだよね?そこまでは頑張ってみれば? 」

というポジティブプットをもらったので、もう半分は彼女は僕の手中にあった。それから1週間くらい経った後に彼女から性産業について学校で議論があるからヒロさんの意見を聞きたいということでライン通話をしたり、彼女が暇なときにプライベートなラインが来るようになった。僕も知的で美しい彼女と話すのが好きで、だんだんとお互いに惹かれていった。デリヘル経営の先輩に「店の子と付き合うのってうまくいきますか?」と聞いたり、すでにオンリーワン症候群が始まっていたのは、後から気づいた。

それから何度か時間を合わせたり、デリのお仕事後にあったり、時には甘い夜を過ごした翌日の昼にデリの仕事に行かせたりもした。僕の方は問題なかったが、彼女は泣いていたりした。しかも、当時付き合っていた彼氏はキープしたままだったので、余計複雑な心境だったと思う。